2014年7月1日火曜日
東アジアのアイデンティティ創成と「多元的世界」構築~『アジアからの世界史像の構築 新しいアイデンティティを求めて』
『アジアからの世界史像の構築 新しいアイデンティティを求めて』
湯山トミ子、宇野重昭 編著 2014年06月 3,600円+税
本書は、2012年開催の国際シンポジウム「アジアからの世界史像の構築――複合的アイデンティティを求めて」の成果をもとに、発表論文を、第一部「アジアのアイデンティティ」、第二部「中国から日本へ アジアから世界へ」、第三部「朝鮮半島から世界へ」の構成でまとめたものである。
現代世界では、グローバリゼーションにより、生み出されようとする「一元化」の流れのなかで、それぞれの国家、地域あるいは個人は、自己の存立をはかるためにその「固有性」の形成力を強めるものと捉え、そこには多元的世界構築の契機と可能性を内在しているとの考えを基礎として、本書では、中国、日本、韓国、北朝鮮における、「西洋からの近代化」の受容を見つめ直し、「グローバルヒストリー」を視点として、グローバル化による「一元化」に対し、東アジアにおけるアイデンティティの創成と「多元的世界」の構築への可能性を考察する。
目次:
はじめに
〈序論〉アジアとヨーロッパの相互補完の時代へ――グローバル・ヒストリーの方法論に寄せて 宇野重昭
Ⅰ アジアのアイデンティティ
グローバル・ヒストリーのなかのアジアのアイデンティティ 濱下武志
はじめに:グローバリゼーションとアジア研究の新たな契機
1.グローバリゼーションとグローバル・ヒストリーの課題
2.グローバリゼーションとグローバルヒ・ストリーの課題
3.グローバル・ヒストリーの中からのアジアのアイデンティティ構築
4.明治知識人のグローバルアイデンティティ世界像――選択された脱亜論
5.琉球・沖縄知識人の七世代・150年――琉球・沖縄をどう見てきたか
6.中国の「脱亜」とアメリカ経由の日本文化論
7.グローバルに中国・東アジアをどう認識するか――開と閉の歴史サイクル
8.グローバルヒストリーによる中国・東アジア認識
9.ディアスポラ現象の進行
10.歴史認識のディアスポラ化
おわりに――近未来のアジアと中国
中国から見える世界像と複合的アイデンティティ――「中国の夢」と中国式「民主主義」の可能性 宇野重昭
はじめに――日中の衝突回避をめざして
1.理念としての「中国の夢」の意義
2.「中国の夢」の仕組みにたいする見方について
3.中国民主主義の独自性の背景
4.歴史的経験のなかの中国民主主義
5.中国民主主義のむつかしさ
6.中国民主主義の漸進性
おわりに――普遍性と民族性の複合的アイデンティティ
Ⅱ 中国から日本へ アジアから世界へ
アジアの近代化と日本 光田剛
はじめに
1.アジアの近代化をめぐる諸問題
2.東アジア近世の成立
3.東アジア近世の変容
4.東アジアの近代化
5.アジアの近代化のなかの日本
戦後日本思想史における“中国革命” 孫歌(湯山トミ子 訳)
1.戦後初期の日本の知識状況と思想状況
2.中国革命に遭遇した日本左翼と日本の知識人
3.革命の方向性:二つの民主主義に関する討論
4.思想契機として“中国革命”
5.戦争と平和:中国革命の思想と世界秩序再編の政治的要求
中国から世界へ――もう一つの魯迅像、“マルチチュード”の時代に向けて 湯山トミ子
はじめに
Ⅰ 魯迅における「弱者」観――二つの形成基盤
1.少年期における弱者体験:生家の没落と家族体験、ジェンダー観の形成
2.青年期における弱小民族としての体験:被圧迫民族としての弱者観と民衆観の形成
Ⅱ 初期魯迅――“人”なき中国に“人”を求めて
1.中国旧社会の人間存在――儒教社会と負の民衆像
2.“人”の世界の創造――“人”の誕生と社会変革のプログラム
3.社会変革論としての子女解放論の特徴と意義
Ⅲ 社会権力との闘い――奪権なき革命と文学者魯迅の使命
1.転換期の思想形成――戦闘的文学者としてのアイデンティティの確立に向けて
2.1927年言説――背景と内的基盤
3.“生”を希求する抵抗主体と権力
Ⅳ 民衆の時代――「弱者」の力と支配的権力との闘い
1.“マルチチュード”とは何か?
2.魯迅と“マルチチュード”
3.“愛”と“共”の世界へ
終わりに――中国から世界へ
Ⅲ 朝鮮半島から世界へ
植民地朝鮮における「宗教」と「政治」――天道教の動向を中心に 川瀬貴也
はじめに
1.東学(天道教)の概略――三・一独立運動まで
2.「文化政治」下の天道教
3.天道教の「対日協力」
おわりに
通底する「朝鮮半島問題」の論理――朝鮮民主主義人民共和国の核兵器開発と竹島/独島 福原裕二
はじめに:問題の所在に代えて
1.竹島/独島問題における韓国の「論理」
2.核開発問題における北朝鮮の「論理」
おわりに:通底する「論理」
おわりに