2013年4月10日水曜日

4月9日の新着和書~『山歌の民族誌:歌で詞藻を交わす』『中華と対話するイスラーム』他

 
「魏晋南朝の遷官制度」
    藤井律之 著 京都大学学術出版会 3,990円
  *宮崎市定以来本格的な研究が始まった中国の官制史研究によって、中世時代の門閥貴族の実態が少しずつ明らかにされてきたが、近年魏晋南北朝時代の官制史研究が注目を浴びている。本書は南朝を中心にそのいくつかの問題を取り上げ、これらに関する確実な知見を提示することで、中国中世史の全体像を把握するうえで貴重な基礎研究になる。
 
「山歌の民族誌:歌で詞藻(ことば)を交わす」
    梶丸岳 著 京都大学学術出版会 6,090円
  *山歌とは,中国南部貴州省のプイ族に伝わる歌掛けである。歌掛けは世界中に広く見られるが,漢字文化圏に支配されながら独自言語を保持し,更には 社会主義 中国の少数民族政策の影響を強く受けたプイ族のそれは,独特の現代的意味を持つ。日本の掛唄とも比較しつつ,現代中国の地方芸能の在りかたに迫る。
「書の原点 金石書学 No.17」
    藝文書院 1,300円

「多民族国家シンガポールの政治と言語:「消滅」した南洋大学の25年」
    田村慶子 著 明石書店 2,625円

「中華と対話するイスラーム:17-19世紀中国ムスリムの思想的営為」
    中西竜也 著 京都大学学術出版会 5,250円
  *かつてアジアの各地から中国にやってきたムスリム移民の末裔は、時々の政治的・社会的状況に翻弄されながらも、イスラームの信仰を固守して独自の共同体を維持した。そこには、マイノリティとしての生死を賭けた、彼ら中国ムスリムの知的奮闘があった。いかにしてイスラームを、中国伝統思想、ひいては中国社会の現実と調和させるか?「中国的イスラーム」の実像に迫る。

「〈仏の物語〉の伝承と変容:草原の国と日出ずる国へ」
    山口周子 著 京都大学学術出版会 2,940円
  *モンゴルの仏伝『仏と12の行い』と日本の『今昔物語』を扱うことで、インドで生まれた物語が、ユーラシア大陸を横断し、北端と東端の地に辿り着くまでにどのような影響関係のもとに成立し、同時に、どのような変容を遂げたかを、サンスクリット原典、チベット語訳、漢語、日本語のさまざまな一次史料を駆使しながら解明する。

「歴史認識を問い直す 靖国、慰安婦、領土問題」
    東郷和彦 著 角川書店 820円