2008年1月31日木曜日

近現代の中国辺疆界務の研究に貴重な一次資料

近現代中国辺疆界務資料(続編) 全10冊
北京 蝠池書院
2007年8月 178,500円

中国と隣国との境界は、正確に画定されていない部分が多いため、清代以来、境界を巡るトラブル、事件乃至戦争が多発し、夥しい数の関係資料が残されている。しかし、さまざまな原因により、長い間にわたって中国辺疆界務についての研究は、目立つ進展がなかった。
本書は、清代と民国時代の代表的な辺疆界務に関する档案資料を収録し、近現代における中国辺疆界務の研究に貴重な一次資料を提供する。収録資料の形式は、公文書、档案史料、辺事匯編、奏議、外交会談節略、電報、書信、当事者の文集や日記、調査報告、メディアの評論、研究レポートなどさまざまであり、内容は、当時の中国とロシア、イギリス領インド、ネパール、ミャンマー、ベトナム、朝鮮、蒙古との境界に関するものが殆どであり、その概要は、下記の通り。

【中国とロシア】
東部の境界については、尼布楚条約により画定されたが、本書に収録されている現地の少数民族の「巡辺歌」や関係者の証言は、界碑の所在地の判明に繋がる。「黒頂子屯墾撤局案」や「李閣学政績録」は、見解が分かれている黒瞎子島の領有権問題に対し注目すべき資料を提供する。当事者周学模や宋小濂の節略記録及び「呼倫貝爾辺務調査報告書」などは、清末に満洲里で行われた中・ロ界務会談の実態を示す重要な一次資料である。中部の境界については、《日本外交文書》から摘録された「日露密約」は、日露戦争後、日本とロシアが結託し、蒙古地区の勢力範囲を画定した史実を掲示する。西部の境界については、「新疆辺界公牘匯鈔」が、新疆の境界問題に関する公文書を数多く収録する集大成的な資料集である。「接収伊犁節略」や「伊犁定界中俄譚話録」は、「伊犁事変」の内幕を披瀝し、「沙大臣南疆勘界日記図説」は、沙克都林扎布が欽命勘界大臣として新疆の境界線の画定を担当した史実を記述し、ともに史料的価値が高い。「帕米爾図説」「帕米爾輯略」「帕米爾分界私議」「西域帕米爾輿地考」「巴馬(帕米爾)紀略」「坎巨提帕米爾疏片略」「帕米爾属中国考」は、帕米爾が中国の領土であることを示す重要な史料である。「阿爾泰山及額爾斉斯河当年之関係」は、関係史料を整理し、厳密な考証を加えたため、史料価値が高い。
【中国のチベットとイギリス・インド】
「蔵印界務交渉条款照会函札」や「升恭勤公蔵印辺務録」は、チベットの地方政府がイギリス・インドの侵略軍との戦いの失敗により、屈辱的な「蔵印条約」に調印した史実の研究に詳細な一次史料を提供する。

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