2010年1月14日木曜日
『自由と国民 厳復の模索』 ~厳復の思想を体系的に捉え直す
『自由と国民 厳復の模索』
區建英 著 東京大学出版会 2009年12月刊 10,290円
亡国の危機に面し外患への対処を迫られた清末中国。民族主義が主流となるなか、むしろ個人に立脚し、自由と理性を基礎とした国民形成から近代化を模索した思想家、厳復。その思想を体系的に捉えなおし、今なお未完の、中国の国民国家建設の課題を浮かび上がらせる。
《序論より》
本書は、自由と国民という主題の下で厳復を取り上げ、彼の思想に対する歴史的、体系的な考察を通じて、国民国家の形成における中国の未完の課題を浮かび上がらせ、今日にも啓発を与えるような模索と創造の知恵を解明することを目指す。そして、厳復の思想を後退的変遷の過程とし「革新」→「保守」→「反動」、あるいは「西化」→「折衷」→「復古」という三つの時期に分ける従来のような方法を取らない。厳復の思想を一つの動的過程と捉え、彼自身の思想構造の解明に力を入れ、その様々な変化を、歴史のダイナミズムにおける彼の思想構造の動態諸相として考察する。厳復の思想を体系的に読み取り、その一貫した思想軸を摑むことによって、中国近代のナショナリズムの主流とは違った厳復の特異性を把握している。
《 目 次 》
序論 未完の思想課題
Ⅰ 思想の遍歴
第一章 激動の時代と思想の形成
第二章 二つの改革道程
Ⅱ 合群
第三章 『天演論』における「合群」と自由
第四章 「合群」と国家・民族・国民
Ⅲ 自由
第五章 「仁政」の再構築と政治的自由
第六章 学問の変革と倫理的自由
Ⅳ 互注と会通
第七章 老荘注釈における創造と自由
第八章 異文化接触における「会通」と自由
結語 「事理」と個人独立のアイデンティティ
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