小社に寄せられた、中国関係のイベント・シンポジウムなどの情報をご紹介いたします。最新の情報はコチラでご確認ください。
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
■国際シンポジウム
新世紀:東アジア諸都市のサブカルチャーと若者の心
二〇〇〇年代に入ったいま、文学をめぐる状況はさらに混迷を深め、文学の周縁化、若者の文学離れを嘆く声が高まっている。少なくとも、狭い意味での文学(純文学や大衆文学)だけを語る意味が薄れてきているのは確かだ。
しかし、若者が文学作品を読まない訳ではない。例えば日本では、村上春樹の『1Q84』が三巻で400万部以上を売り上げている。中国に目を向けても、余華の長編『兄弟』は35万部を売っている。純文学に限らず、ライトノベルに範囲を拡げれば、もっと読まれている作家や作品が目白押しである。日本では、谷川流の『凉宮ハルヒの驚愕』(上下)の売り上げが初版だけで100万部を越えた。現在9巻まで出ているシリーズ全体では1700万部を超える。中国でも、郭敬明の長編ファンタジー『幻城』が200万部、青春群像を描いた『小時代1.0』『小時代2.0』がそれぞれ100万部を売っている。
アニメ・マンガの人気はさらにすごい。そうした傾向は、コスプレや二次創作などの同人活動の隆盛とも強く結びついている。
こうした現象は何を物語っているのだろうか。わたしは文学をとりまく環境に、いくつかの次元で大きな変化が起こっているのではないかと考えている。まず、若者のテクストの読み方がこれまでと異なって来ている。それと同時に、読者が作品を読むことをとおして期待するものも変化してきている。さらに言えば、そうしたキャラクターへの関心や、作品に求めるものの変化の背景には、若者のある種の孤独感や虚無感、閉塞感、あるいは社会との乖離感(社会に参画できるという思いの欠如といってもよい)がある。
そうした関心から、わたしは東アジアの五つの都市、北京、上海、香港、台北、シンガポールで、村上春樹の作品と、漫画・アニメ・ライトノベルの受容、ならびに同人活動への参加についてフィールド調査を行った。
今回のシンポジウムでは、その調査の報告を行うとともに、各領域の専門家から、現在の若者創作、同人活動をめぐる状況について報告を受ける。それらを通じて、いま東アジアの諸都市で起こりつつある大きな変化の実相を垣間見ることができるはずである。
2012年3月 早稲田大学文学学術院 千野拓政
▼日程:3月23日(金)、24日(土)
▼会場:早稲田大学文学学術院(戸山キャンパス)第1会議室
▼参加無料、通訳あり
▼主催:早稲田大学大学院文学研究科中国語中国文学コース
共催:早稲田大学中国現代文化研究所
>>> 関連書籍:『アジア遊学 No.149 東アジアのサブカルチャーと若者のこころ』(勉誠出版、2012年03月刊)
▼プログラム:
[3月23日]
【第一部:東アジアのサブカルチャー】
11:00 開会(司会:千野拓政)
11:05 基調報告「わたしたちはどこへ行くのか?」(千野拓政)
12:20 質疑応答
12:30 昼食
13:30 各地区の調査報告:北京(趙楠、北京大学大学院)
14:30 ティー・ブレイク
14:40 各地区の調査報告:台湾(陳栢靑、台湾大学大学院)
15:40 ティー・ブレイク
15:50 各地区の調査報告:シンガポール(陳宇昕、シンガポール聯合早報)
16:50 上海・香港地区調査紹介
17:10 質疑応答
17:30 終了
18:00 夕食
[3月24日]
【第二部:それぞれの領域から】
10:00 発表:「インターネット時代の青年文学創作」 趙長天(作家、『萌芽』雑誌編集長)
11:15 ティー・ブレイク
11:25 発表:「都市・青春の夢」 笛安(作家)
12:40 昼食
13:40 質疑応答
14:00 発表:「魂の中の自分にCOSしている――上海のコスプレ」 顧錚(復旦大学教授、写真家)
15:15 ティー・ブレイク
15:25 発表:「中国のコスプレ――キャラクター扮装の心と形」 喜喜(コスプレイヤー)
16:40 質疑応答
17:00 ティー・ブレイク
17:10 ラウンドテーブル・ディスカッション(司会:千野拓政)
18:00 閉会
18:30 さよならパーティー
0 件のコメント:
コメントを投稿