2011年7月20日水曜日
『厳復』~魯迅に衝撃を与えた“中国の福澤諭吉”の生涯
『厳復 富国強兵に挑んだ清末思想家/東方選書41』
永田圭介著 東方書店 2011年07月刊 2,100円
アヘン戦争後の内憂外患から辛亥革命へ。近代国家へと生まれ変わる中国に生きた啓蒙思想家であり、魯迅にも強い影響を与え、日本の福澤諭吉にも比肩される厳復(1854~1921)の生涯を描く。黎明期の海軍学校に学んだ少年時代と英国留学を経て、日清戦争の敗北に衝撃を受けた厳復は、救国ための精力的な言論活動を開始する。『天演論』などの訳著を世に問う一方、北京大学の維持・改革にも尽力。そして晩年、第一次大戦の殺戮を目の当たりにした厳復が『荘子』に傾倒した理由とは。列強による民族淘汰の危機感の下、祖国のために「富強」を追求した厳復の姿を、同時代に富国強兵への道を歩んだ日本をも視野に入れながら、共感を込めて描く評伝。
《 編著者のことば 》
……厳復といえば、ややもすれば「学術研究」の対象になりがちで、一般の読者には親しみ難いテーマの枠の中に彼を封じ込め、敬して遠ざけているように思われる。しかし厳復の生涯を、民族淘汰の危機に挑戦した、ひとりの中国人啓蒙戦士の闘いのドラマとして眺めると、あらためて彼のほとばしるような精神の奔流が伝わってくる。それはあたかも同じ時代に、貧しい後進国明治日本で苦闘した、若い先覚者たちにも通じる共感の物語でもある。このような理由から、本書では、彼の著作や翻訳以上に厳復という人物と彼が追及した「富強」の意味、そして彼が生きた時代の推移を重点的に描き出すよう心がけた。(「本書の目的」より)
《 主 要 目 次 》
序文 王暁秋(北京大学歴史系教授)/翻訳:王衆一(人民中国雑誌社総編集長)
本書の目的
第一章 少年時代の環境
第二章 福州船政学堂時代
第三章 実習航海と台湾従軍
第四章 英国留学
第五章 北洋水師学堂時代
第六章 甲午戦役(日清戦争)
第七章 変法維新運動
第八章 翻訳活動と訳著概要
第九章 生生流転
エピローグ
年譜
引用・参考文献
あとがき
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