2010年2月24日水曜日
『中国の基層からのガバナンス』~中国のグラスルーツで起きている変化を多面的に考察
『中国の基層からのガバナンス』
菱田雅晴著 法政大学出版局 2010年2月刊 6,300円
現代中国が直面するガバナンス課題の問題意識を背景に、本書は中国の懊悩とその意味を描き出そうとしている。とりわけ、中国の改革開放という未曾有の実験の成功が、基層政治社会から発芽し、それを党=国家が政策として培養することで大きく開花した経緯を想起するならば、基層=グラスルーツ中国で何が起きつつあるのか、はたしてその基層部分での変化はいかなるインパクトを中国というこの巨大システムに与えることになるのか……この視座を本書では関心の核に据えている。政治学、社会学などをディシプリン背景とするさまざまな研究者が国家社会関係フレームワークに依拠しつつこうした問いに挑んだ成果が本書である。
《 目 次 》
序章 自律化社会のガバナンス (菱田雅晴)
第Ⅰ部 コーポラティズムの可能性
第1章 中国におけるコーポラティズムの現在 (石井知章)
第2章 中国におけるコーポラティズムの行方 (小嶋華津子)
第Ⅱ部 地域社会ガバナンスの苦悩
第1章 構造変動期の党政エリートと地域社会 (南裕子、中岡まり)
第2章 農村社会の凝集力 (阿古智子)
第3章 「権力-利益構造網」と農村群体性利益の表現ジレンマ(呉毅)
第Ⅲ部 国家ガバナンスの模索
第1章 公聴会制度から見る政治参加拡大の実態 (唐亮)
第2章 インターネット情報と政府の監視・管理 (白智立)
第3章 都市部基層政府とNGOの連携 (趙秀梅)
第Ⅳ部 党・国家・社会関係の拮抗
第1章 社会的「泄憤」事件とガバナンスの苦境 (于建嶸)
第2章 SARS危機と国家・社会関係の政治力学 (呉茂松)
第3章 執政能力の強化と党内民主 (王長江)
終章 忍び寄る危機 (菱田雅晴)
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