2014年4月16日水曜日

【最新刊】 『「文化漢奸」と呼ばれた男 万葉集を訳した銭稲孫の生涯』

 
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『「文化漢奸」と呼ばれた男 万葉集を訳した銭稲孫の生涯』
  鄒双双 2014年04月 3,000円

銭稲孫は、日本文学の翻訳業績において、周作人と比肩されるが、中国でのその評価は低いといえる。北京が日本の占領下にある時期もその地にとどまり、万葉集をはじめ、数多くの日本文学の翻訳紹介を行い、必然的に日本の文化人とも深い付き合いがあった。佐佐木信綱、吉川幸次郎、目加田誠、竹内好、岩波茂雄、谷崎潤一郎などの名前が見える。戦時下でのそういった活動により、銭稲孫は、日中戦争終結後、中国で「文化漢奸」(文化面での民族の裏切り者)として投獄されることになったが、同様の扱いを受けた周作人と比して、ほとんど取り上げられることがなかった。本書では、銭稲孫の日本との関わりやその業績を見直し、新たにその生涯を評価するものである。

■編著者紹介:鄒双双(すう そうそう)
1984年中国湖南省生まれ。四川大学外国語学部日本語学科卒業、関西大学大学院修士、博士課程修了。2013年4月から2014年3月まで、日本学術振興会特別研究員(PD)として京都大学人文科学研究所に在籍。専攻、日中近代文化交渉、日中比較文学。
主な論文:「翻訳家銭稲孫と日本人との交遊―谷崎潤一郎と岩波茂雄を中心に」(関西大学国文学会『国文学』96、2012年3月)、「日本占領下の北京における張我軍の翻訳活動について――島崎藤村、武者小路実篤と関連して」(増田周子編著『戦争の記録と表象――日本・アジア・ヨーロッパ』、関西大学出版部、2013年3月)など。

〔主要目次 〕
  序文(河田悌一)
  序論
 第一部 戦前の銭稲孫と日本
  第一章 日本留学
  第二章 「対支文化事業」における銭稲孫
  第三章 北京にいた日本人との交遊
 第二部 戦時中の翻訳活動と日本
  第四章 日本文学翻訳への道のり
  第五章 日本文学翻訳の幕開け――北京近代科学図書館との関係
  第六章 力作『漢訳万葉集選』の成立
  第七章 『万葉集』の中国語訳史における銭稲孫訳
  第八章 一生の志と生涯の友――『源氏物語』の翻訳及び谷崎潤一郎、岩波茂雄との交遊
 第三部 戦時中の是非――「文化漢奸」の再検討
  第九章 「文化漢奸」の虚実
  結論

  主要参考文献
  挿図出典一覧
  あとがき
  附録
   一、佐佐木信綱宛て銭稲孫書簡
   二、岩波茂雄宛て銭稲孫書簡
   三、銭稲孫略年譜
   四、銭稲孫著作、訳作書目
  索引