2011年6月3日金曜日
『一九四五夏末』~台湾人女性の視線を通して見る「終戦」とは?
『一九四五夏末』 *お取寄せとなります
BARZ 著 全力出版有限公司 2011年02月 2,646円
植民地下の台湾人が、第二次大戦と日本の敗北にどのように向き合い、激動の時代をどう生き抜いたのか?日本人の養女になり医者を目指す姉と、外の世界を知らぬまま、若くして郷里で結婚を選んだ妹。対照的な二人の姉妹を主人公に、戦争だけではなく女性の権利・教育をもテーマに織り込んだ作品となっている。
台湾国立歴史博物館が「第二次大戦下の台湾人」特別展に合わせ、台湾の出版社と共同刊行。巻末に中央研究院近代史研究所研究員による解説文を収録し、その他用語集、参考文献、関連年表などの付録を付す。
WEBで全話の中盤部分までが無料公開され、20万アクセスを記録した話題作。
【 目 次 】
第一章 空襲
第二章 書信
第三章 車站
第四章 姐妹
第五章 告白
第六章 家人
解説:從一九四五夏末説起(中央研究院近代史研究所研究員 游鑑明)
付録:用語典故集、参考文献、史実年表
【 関 連 情 報 】
■「政府が監修した初の漫画」(NNA.ASIA)
http://news.nna.jp/free/news/20110602twd001A.html
■「531臺北大空襲 重回65年前的《一九四五夏末》-2011/05/31」(国立台湾歴史博物館WEBサイト)
http://www.nmth.gov.tw/Default.aspx?tabid=228&mid=620&itemid=1334
■「《1945夏末》用漫畫看台灣史」(台湾での報道)
http://times.hinet.net/times/article.do?newsid=5337712&option=recreation
【 内 容 紹 介 】 *出版社の作品紹介より
“「蓮ちゃん、お元気ですか?」
1945年5月31日。
台北はアメリカ軍の爆撃機により無差別爆撃され、市民は約3000人が死亡し、負傷者は数万も及んだ。のちに「台北大空襲」と呼ばれるこの事件は、台湾人女性・呂雁萍(リュ・イェンピン)の医者になる夢を、徹底的に打ち砕いてしまった。
14年前、雁萍はまだ6歳だったころのこと。彼女は養女として台北の金持ちの家に出された。田舎に残り、勉強もままならずに早々畑仕事に参加し、大きくなったら男に嫁ぐ運命しか選べない妹と違って、雁萍は良い教育を受け、何の不自由のない生活を過ごし、努力さえすれば、ほしいものはきっと手に入ると信じてた。
台湾人であることにコンプレックスを抱きながらも、政策に従って名前を「宮下萍子」に改め、日本人女性でもなかなかできない日本留学までやり遂げて、医学の道を歩み、自己肯定しつつ向上し続けてきた――が。
救いようのない傷者を、成す術のない局面を目にして、廃墟と向き合う彼女の胸中には戸惑いばかり。
東京帝国大学医学部の教授・後藤雄三郎は、長年の友人である雁萍の養父に頼まれ、雁萍の見守るため台北帝国大学に客員教授として在籍しているが、目の当たりに見る台北大空襲の一件で日本軍を見限った。
戦況が落ち着くまで、ひとまず台湾から脱出し、香港で避難しようと雁萍をなんとか説得したけれど、雁萍はひとつの条件を出した。
3日間でもいいから、故郷に、新竹に一回戻りたい。実の妹・玉蓮(ユーリィェン)のいる新竹に。
妹のいる故郷には、何か心残り。
――そこに、残しておきたいものがある。
――何か、そこに忘れてきたものがある。
とても大事なもの。
どこから来て、どこまで行くのか。そして、どこへ帰るのか。
台湾人であること。姉妹であること。女であること。
「戦時下の台湾女性」を軸に描き出す、60年前の架空の姉妹のお話――いまの台湾人の根底にあるものに通じる物語。
同じこの空の下にいた、あの夏――彼女と彼女の葛藤と断ち切れない思い。”
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