『モダンガールと植民地的近代』～人びとを惹きつけた「不在の女」＝「モガ」の正体とは？

　
『モダンガールと植民地的近代　東アジアにおける帝国・資本・ジェンダー』
　　伊藤るり、坂元ひろ子、タニ・E・バーロウ 編　岩波書店　2010年2月刊　3,360円

断髪、洋装、シガレット。新しもの好きで自由恋愛主義――帝国が領土と市場をめぐって激突する最中、人びとの憧憬と敵意とを集めたコスモポリタンな女性像「モガ」。「モダンな女」がいまだ不在の東アジアで、彼女の姿（イコン）が雑誌・文学・諷刺漫画・広告図像に忽然と出現するや賞賛と揶揄を巻き起こし、その表象と言説の力学はジェンダー、階級、エスニシティを新たなヒエラルキーのもとへと再編成していった……。国家、資本、エリート層、下層労働者、それぞれの主体が自らの欲望を投影した植民地的近代を、中国・日本・沖縄・朝鮮・台湾の豊な資料をもとに、10人の研究者が解読する。

《 目 次 》
　序論　東アジアにおけるモダンガールと植民地的近代
Ⅰ　資本の欲望
　１　奢侈と資本とモダンガール－資生堂と香料石鹸　（足立眞理子）
　２　買うということ－1920年代及び30年代上海における広告とセクシー・モダンガールのイコン　（タニ・E・バーロウ）
Ⅱ　まなざしの政治
　３　宗主国のまなざし－視角文化に見られるモダンガール　（ヴェラ・マッキー）
　４　漫画表象に見る上海モダンガール　（坂元ひろ子）
　５　新しい女・モガ・良妻賢母－近代日本の女性像のコンフィギュレーション　（牟田和恵）
Ⅲ　帝国を生きる
　６　『婦人之友』における洋装化運動とモダンガール　（小檜山ルイ）
　７　植民地的近代と消費者の欲望－20世紀初頭の日本における下層中流階級ならびに労働者階級の女性たち　（バーバラ・H・佐藤）
　８　女の移動と植民地的近代－沖縄のモダンガール現象への接近　（伊藤るり）
　９　植民地台湾の「モダンガール」現象とファッションの政治化　（洪郁如）
　10　朝鮮の植民知識人、羅蕙錫の近代性を問う　（金恩実）
　　あとがき