2012年11月13日火曜日
東方書店最新刊『台湾文学と文学キャンプ 読者と作家のインタラクティブな創造空間』~台湾文学は夏に作られる
『台湾文学と文学キャンプ 読者と作家のインタラクティブな創造空間』
赤松美和子 東方書店 2012年11月 3,360円
文学キャンプとは、作家・編集者・読者ら文学愛好者が一堂に会する文学研修合宿のことで、読者にとってはファン感謝祭、作家を目指す者にとっては作品をアピールする機会、作家にとっては編集者や同僚作家との交流の場として機能しているという。文学キャンプは、戒厳令下の1955年に、中国青年反共救国団によるエリート青年を対象とする反共教育として始まったが、民主化が進んだ今日まで連綿と続いているのは何故なのか。著者は、文学キャンプに参加することを手始めに、作家・編集者・研究者・文学キャンプ主催者および参加者・救国団関係者ら200名以上への取材に突き進み、その謎に迫る。
【目次】
推薦のことば (東京大学文学部教授・藤井省三)
序章 台湾文学は夏に作られる
第一章 台湾青年の総作家化計画――救国団の文芸活動と『幼獅文芸』編集者瘂弦
学内の文学教育――逸脱の日本文学と正統の台湾文学
救国団の文芸活動――文学の数と力
『幼獅文芸』――全台湾青年の愛読書
第二章 台湾文学の夏――50年の文学キャンプ史
文学キャンプとは何か――台湾文学、3000人の夏
文学キャンプの歴史――文学場の力学
文学キャンプ体験記
第三章 台湾の芥川賞――『聯合報』『中国時報』二大新聞の文学賞
二大新聞の副刊――台湾文学のトップメディア
二大新聞の文学賞
「政」の「時報文学賞」と「性」の「聯合報小説賞」――作られる文学思潮
第四章 戒厳令解除後の「私たち」の台湾文学――李昂と朱天心
李昂作品に見る戒厳令解除――「迷園(迷いの園)」、『自伝の小説』における「他者」なる主人公
朱天心「想我眷村的兄弟們(眷村の兄弟たちよ)」に見る限定的な「私たち」
終章 文学大国台湾の実像
注
参考文献
あとがき
付録 戦後日本における台湾文学出版目録
索引