2012年10月31日水曜日
『五胡十六国 [新訂版]』~東方選書の好評書が加筆修正を加えた新訂版として復刊!
『五胡十六国 中国史上の民族大移動 [新訂版]/東方選書43』
三崎良章 東方書店 2012年10月 2,100円
3世紀末から5世紀半ばにかけて、中国北部では匈奴を始めとする諸民族が移動・定住し、彼らによって建てられた政権が並立する「五胡十六国時代」と呼ばれる大分裂時代を迎えた。従来、この時期は暗黒時代と考えられがちであったが、後の隋唐帝国の制度や文化、東アジア世界の国際関係などは、五胡十六国時代の諸政権にその淵源を求めることができるのである。本書は、諸政権の興亡を詳述する傍ら、新たな中国建設への胎動という観点からこの時代に光を当てる。
本新訂版では、10年間の研究の進展に基づいて内容を修正し、また墓室画像や墓誌など出土資料をふんだんに用いて、民族融合の様子を再現した。
[新訂版の特徴]
初版(2002年)の文章の全面的な修正、10年間の研究の進展による内容の修正を施したうえで、次の4点の変更を行なった。
(1) 系図に在位年を加えた。
(2) 写真の一部差し替えと追加を行なった。
(3) 初版第五章第一節~第三節を第五章「人の移動」とした。
(4) 第六章「『五胡』と漢族の融合」を新たに設け、初版第五章第四節を第一節「融合の過程」とし、第二節「壁画墓・画像磚墓に見られる『五胡』と漢族」を加えた。
《目次》
序章 民族の時代
第一章 後漢~西晋時代の少数民族
一 少数民族の中国移住
匈奴/烏桓/鮮卑/羌族/氐族/丁零/夫餘・高句麗
二 中国王朝の少数民族への対応
官爵の授与/異民族統御官/徙戎
第二章 「五胡」とは何か、「十六国」とは何か
一 『晋書』と『魏書』と『十六国春秋』など
『晋書』/『魏書』/『十六国春秋』
二 「五胡」
数字と少数民族/「五胡」の出現/「五胡」の具体化
三 「十六国」
『晋書』載記冒頭記載の諸国/『晋書』載記本文の諸国/『魏書』・『宋書』・『北史』の諸国/「十六国」の定着化
第三章 「十六国」の興亡
一 五胡十六国時代の全体像
八王の乱/西晋の滅亡と東晋の成立/「十六国」興亡の梗概
二 五胡十六国時代前期
成漢/前趙/後趙/冉魏/前燕/前仇池/前涼/代
三 前秦の華北統一と淝水の戦い
前秦の華北統一/淝水の戦い/淝水の戦い後の前秦
四 五胡十六国時代後期
西燕/後燕/南燕/北燕/翟魏/後秦/西秦/夏/後涼/南涼/北涼/西涼/後仇池/北魏
第四章 「十六国」の国際関係と仏教と国家意識
一 朝鮮半島との関係
高句麗への亡命者/遼西・遼東と朝鮮半島の関係
二 西方・北方との関係
西域経営/トゥルファン/吐谷渾/柔然
三 仏教の展開
涼州の仏教/仏図澄/釈道安/鳩摩羅什/現世利益的様相/敦煌
四 東晋との関係と国家意識
「十六国」の東晋対策/君主の称号/国家意識
第五章 人の移動
一 遷都
遷都の実態/遷都の目的/遷都に伴う人間の移動
二 流民
流民の発生/塢/僑州郡県
三 徙民
徙民の目的/徙民の方向と規模/徙民の全貌
第六章 「五胡」と漢族の融合
一 融合の過程
「五胡」君主の漢文化受容/漢人士人の「五胡」政権参加/王猛/軋轢と衝突
二 壁画墓・画像磚墓に見られる「五胡」と漢族
壁画墓と画像磚墓/甘粛の画像磚墓/地埂坡三号墓/丁家閘五号墓/朝陽の壁画墓
終章 南北朝から隋唐帝国へ
おわりに
改訂版あとがき
写真出典一覧
主要参考文献